ネット上の議論で決定的に見落とされている盲点が、私たちが日常的に摂取している硝酸塩・亜硝酸塩の出どころです。「発色剤=加工肉の害悪」という構図ばかりが強調されますが、科学的な摂取源の内訳はまったく異なる様相を呈しています。
人間が体内に取り込む硝酸イオンのおよそ80〜90%は野菜から摂取されています。ホウレンソウ、チンゲンサイ、レタス、大根などの葉物・根菜類には、土壌中の肥料に由来する「硝酸態窒素(硝酸塩)」が自然に高濃度で含まれています。
野菜に含まれる硝酸塩は、口の中の唾液腺や口腔内細菌の作用によって「亜硝酸塩」へと還元されます。つまり、加工肉を一切口にしない人であっても、野菜を食べるだけで唾液中に自然と亜硝酸イオンが生み出され、胃へと送り込まれているのです。
それにもかかわらず、野菜を食べて胃がんのリスクが跳ね上がらないのはなぜでしょうか。その答えは、野菜に豊富に含まれるビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどの強力な抗酸化物質が、胃の中でのニトロソアミン生成を徹底的にブロックしているからです。
「加工肉の添加物は猛毒だが、無農薬野菜なら安心」という二元論は、生化学的な視点からは不完全な理解と言わざるを得ません。ハムやソーセージを食べる際に、生野菜のサラダやブロッコリーを添える、あるいは緑茶を一緒に飲むといった食べ合わせを意識するだけで、体内のニトロソアミン生成リスクは効果的に抑えられます。