多くの日系外食チェーンが中国市場の激しい競争や景気変動の波に揉まれて撤退を余儀なくされるなか、サイゼリヤが独走を続けている背景には、中国特有の社会・消費トレンドが深く関係しています。現地取材と消費者行動の分析から見えてきた、サイゼリヤが中国で絶大な人気を誇る理由は主に3点に集約されます。
第1の要因は、近年の中国で爆発的な潮流となっている「平替(ピンタイ=プチプラ代替品)」ブームとの完全な合致です。以前の中国消費市場では「高価格なものを消費して面子(メンツ)を保つ」消費行動が目立ちましたが、経済の安定成長期への移行とともに、若者を中心に「無駄なブランド料を払わず、実質的な価値にスマートにお金を払う」という価値観への劇的なパラダイムシフトが起きました。外食を切り詰めたいが生活の質は落としたくない若者たちにとって、1皿10〜20元台(約200〜450円)でワインやエスカルゴまで楽しめる萨莉亚は、まさに「実利主義の象徴」となったのです。
第2の要因は、食の安全性に対する圧倒的な信頼感です。中国の外食市場では過去に食品添加物や衛生管理に関する報道が幾度となく世間を騒がせてきました。その点、サイゼリヤは契約農家や自社専用工場を軸にした厳格なサプライチェーンを現地でも構築しており、「セントラルキッチン方式による徹底した衛生管理と均一な品質」が公認されています。小さな子どもを持つ現地の若いファミリー層が「ここなら安心して子どもに食べさせられる」と太鼓判を押す理由はここにあります。
第3の要因は、中国の大衆食堂にはない「時間消費型の快適な空間」です。中国のローカル格安食堂(麺館や軽食店)は回転率を最優先するため、食事が終わるとすぐに退席を促されるプレッシャーが少なくありません。しかし萨莉亚では、ドリンクバーを注文すれば友人と何時間でも会話を楽しみ、勉強やテレワークに活用することすら咎められません。この「長居できる圧倒的サードプレイス価値」が、カフェ代を節約したい現地の学生やクリエイター層を強く惹きつけています。