こうした激動の権力史は、エンターテインメントの枠を超えて大衆文化にも強い影を落としている。1979年の粛軍クーデターを題材にした映画『ソウルの春』は、軍部内の息詰まる攻防を描き出し、若年層を含む数千万人を映画館へと駆り立てた。歴史の暗部を直視し、なぜ独裁の連鎖が起きたのかを問い直す大ヒットとなった。
また、Netflixで配信され世界的な反響を呼んだドラマ『突風』は、首相と経済副首相が繰り広げる冷酷無比な政争を描き、現代韓国政治の病理を容赦なくえぐり出した。財閥との癒着、大統領の不正、検察の謀略など、現実の事件を想起させるポリティカル・スリラーの描写は、フィクションでありながら極めてリアリスティックだ。
これらの作品が熱烈な支持を集める背景には、市民が政治の虚飾を見抜くリテラシーを高めている事実がある。フィクションを通じて自国の過去と現在を批評する文化は、韓国社会特有のエネルギーといえる。