「斫る」という漢字は、漢検1級レベルに相当する非常に珍しい文字です。普段の生活で目にする機会は少ないものの、文字の構造を分解するとその成り立ちが鮮明に浮かび上がります。
「斫」の部首は「斤(きん・おのづくり)」です。「斤」は古代において樹木を伐採したり石を割ったりするために使われた「手斧(ておの)」の形を象った象形文字です。左側に配置された「石」と合わさることで、「石を手斧や鑿(のみ・たがね)で叩き割る」「石材を切り落として加工する」という意味を持つ会意兼形声文字として成立しました。
読み方としては、訓読みで「はつ・る」「き・る」、音読みでは「シャク」と読みます。古文書や古典的な木工・石工の世界では、木材の表面をちょうな(手斧)で荒削りする作業も「斫る」と表現されていました。
一方、日本語の「はつる」という言葉自体の語源は、古代の大和言葉にあります。物の端(はし)を切り落とす「端切る(はしきる)」、あるいは端を削ぎ落とす「端削る(はそる)」という表現が時代とともに転訛し、「はつる」へと変化したという説が有力です。「対象物の端や不要な一部を叩き落とす」という物理現象に対して、同じ概念を持つ漢字「斫」が当てられたことで、「斫る」という表記が定着しました。