ネット上の口コミや知恵袋などを精査すると、「数回打ったら劇的に階段が楽になった」という高評価がある一方で、「何十回打ってもまったく効かない」「気休めにしかならない」という厳しい意見が目立ちます。なぜここまで評価が二極化するのでしょうか。
現場の医師が口を揃える最大の理由は、変形性膝関節症の進行度(グレード)と治療適応の不一致です。
医学的に用いられるKellgren-Lawrence(KL)分類において、軟骨の摩耗が軽微な「グレード1〜2(初期〜軽度)」や、軟骨のすり減りが中等度までの「グレード3(進行期)」では、ヒアルロン酸の潤滑作用や抗炎症作用が十分に威力を発揮します。関節内にまだクッションを受け止める軟骨組織が残っているためです。
しかし、関節の隙間が完全に消失し、骨同士が直接ぶつかり合っている「グレード4(末期)」に至ると、ヒアルロン酸を注入しても骨の物理的な衝突や神経刺激を抑えることは極めて困難になります。これが「打っても効果がない」と感じる最大の構造的要因です。
また、膝の痛みの原因が「関節内部」ではなく、膝周囲の筋肉の過緊張、靭帯の炎症、あるいは股関節や足首のアライメント異常(歪み)に起因している場合も、関節内に注射を打つだけでは痛みが取れません。診断の精度と、現在の病期を正確に把握することが極めて重要となります。