園芸相談の現場で圧倒的に多いのが、「花は咲くのに実が落ちてしまう」「葉ばかりが鬱蒼と茂る」という訴えです。農学や植物生理学の観点から分析すると、この現象には明確な2大構造要因が存在します。 第1の要因は、肥料の配合ミスによる栄養成長への偏り(葉ボケ現象)です。植物には、葉や茎を伸ばす「栄養成長」と、花や実を作る「生殖成長」の2つのフェーズがあります。市販の観葉植物用肥料や油かすなど、葉肥と呼ばれる窒素(N)成分が過剰に含まれる肥料を与え続けると、株は「まだ体を大きくする時期だ」と錯覚します。その結果、濃い緑色の葉ばかりが生い茂り、花芽が育たず、たとえ開花しても結実に至るエネルギーが供給されません。 実を付けたい時期には、窒素を控えめにし、実肥と呼ばれるリン酸(P)やカリ(K)が強化された肥料(N-P-K比が3:7:4など)へ切り替えるアプローチが鉄則です。
第2の要因は、室内やベランダ環境における受粉プロセスの破綻です。自然界ではミツバチやアブなどの訪花昆虫、あるいは吹き抜けるそよ風が花粉を媒介します。しかし、風通しの悪いベランダや室内栽培では花粉が雌しべに届きません。ワイルドストロベリーは両性花であり自家受粉が可能ですが、微小な刺激がなければ受粉が完了しないのです。
開花を確認したら、午前10時前後の花粉が出ている時間帯に、柔らかい筆や綿棒の先で花の中心(黄色い部分)を優しく撫でるように人工授粉を行ってください。指先で軽く花首を弾いて微振動を与えるだけでも、受粉成功率は劇的に跳ね上がります。