炊きたてのご飯は、ふっくらとして甘みがあり、艶やかな光沢を放っています。これは米に含まれるデンプンが水分と熱によって膨潤し、消化しやすい「α(アルファ)化」の状態にあるためです。ところが、冷凍ご飯がまずい理由の根底には、このα化デンプンが冷えて結晶化し、硬くボソボソとした「β(ベータ)化」へ逆戻りする現象が存在します。
食品科学の観点から最も危険視される温度帯が「0℃〜4℃」のチルド領域です。炊飯後のご飯を常温で放置して冷ましたり、粗熱を取る過程でこの温度帯に長く滞留させたりすると、デンプンの老化が急速に進行します。一度老化して水分が抜けたデンプンは、後から電子レンジで加熱しても完全に元の弾力を取り戻せません。これが、パサつきを引き起こす決定打です。
さらに見過ごせないのが、特有の嫌な臭いです。冷凍ご飯の臭いの原因は主に二つあります。一つは、包むタイミングが遅れて乾燥が進んだ米粒が、冷凍庫内の壁面や他の食材から揮発した油脂成分・ニオイ分子をスポンジのように吸着してしまう「移り香」です。もう一つは、低密度ポリエチレン製の安価なラップフィルムの微細な隙間から庫内の空気が透過し、米に含まれる微量な脂質が酸化することにあります。「熱いまま密閉して急速に凍らせる」という大原則を外した瞬間、劣化へのカウントダウンが始まっています。