田沼意次の改革は悪政か先進経済か?失脚の真相と再評価を解剖

田沼意次の改革は悪政か先進経済か?失脚の真相と再評価を解剖

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田沼が断行した具体的な経済政策は、多岐にわたる領域で商業資本と国家権力を結びつけるものでした。その主軸となったのが商人団体の公認と専売制度の確立です。

第一の柱が株仲間の公認です。享保の改革期には物価高騰の原因として警戒されていた同業者組合(株仲間)をあえて公認し、独占的営業権を付与する見返りとして、幕府に「冥加金(みょうがきん)」や「運上金(うんじょうきん)」と呼ばれる営業税・冥加税を納めさせました。これにより、商人には安定した商権が保障され、幕府には天候に左右されない現金収入が定期的に転がり込む共存共栄のインフラが完成しました。

第二の柱が対外経済戦略です。出島における長崎貿易と銅座の再編はその象徴と言えます。当時、長崎貿易では銀や銅の海外流出が深刻な問題となっていました。田沼は全国の銅山から産出される銅の集荷・精製を一手に管理する「銅座」を設置し、幕府の管理下で厳格な統制貿易を実施しました。さらに、俵物(煎海鼠、フカヒレ、干しアワビなどの海産物)を蝦夷地などから集積して清国へ輸出する交易体制を築き、貴重な金銀の国外流出を防ぐと同時に外貨獲得を企図しました。

さらにインフラ土木事業として挑んだのが印旛沼手賀沼の干拓です。利根川水系の氾濫原である下総国の印旛沼・手賀沼を干拓することで、莫大な新田を生み出すだけでなく、利根川と江戸湾を結ぶ物資のバイパス水路を確保しようと試みました。町人資本(豪商)からの出資を募って工事を進める官民連携(PPP)の手法が導入され、工事は一時大いに進捗を見せました。

対外的な地政学リスクにも極めて敏感でした。北方のロシア帝国南下に危機感を抱いた田沼は、蝦夷地開発と最上徳内をはじめとする探検隊の派遣を主導します。幕府直轄による蝦夷地の調査を実施し、農地開拓、鉱山採掘、さらにはアイヌ民族を介した対ロシア交易まで視野に入れた北方領土の国家戦略を構想していたのです。

鈴木 陽菜
著者

鈴木 陽菜

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