1980年10月5日、日本武道館。純白のマイクをステージ中央に静かに置いた彼女の決断は、当時の日本のエンターテインメント界に未曾有の衝撃を与えた。トップスターとして絶頂期にありながら、結婚を機に完全に身を引く道を選んだ決意。その後、幾度となく浮上した復帰説やミリオンセラーを誇る過去の作品群の再評価の波にも流されることなく、彼女は一貫して自らの意思を貫き通してきた。
脚光を浴び続ける世界から距離を置くことは、決して容易なことではない。しかし、彼女にとって家族との時間や一人の人間としての穏やかな暮らしを守ることは、何物にも代えがたい価値観だった。スポットライトの熱狂を背に受けながら去った潔さこそが、今なお神話化されるカリスマ性の源泉である。