トレーニングを開始して数日から数週間のうちに体重計の針が右肩上がりに振れる現象は、決して珍しいトラブルではありません。厚生労働省の運動指針や日本体力医学会の研究データを紐解くと、トレーニング初心者が短期間で1kg以上の純粋な筋タンパク質を合成することは生理学的に不可能です。それにもかかわらず体重が増加する背景には、筋肉の炎症反応とエネルギー補給に伴う一時的な水分バランスの変化が存在します。
ウェイトトレーニングによって筋線維に微細な損傷が生じると、体内では修復のための急性炎症プロセスが作動します。患部には血液や間質液が集まり、強いむくみ(水分貯留)が発生します。さらに、酷使された筋肉は次なる運動に備えてエネルギー源である筋グリコーゲンを蓄えようとしますが、このグリコーゲンは1gあたり約3〜4gの水分と結合して筋細胞内に保持される特性を持っています。つまり、筋トレ初期の体重増加の正体は、脂肪が増えたわけでも筋肉そのものが急激に肥大したわけでもなく、筋細胞内に引き込まれた水分重量に過ぎないのです。