「駅」の歌詞が描くのは、夕暮れの雨の駅で偶然見かけた元恋人と、その姿を人混みの影から見つめる女性のモノローグです。竹内まりや自身が東急東横線の渋谷駅付近で目撃した日常の情景から着想を得たとされる本作には、心理学的にも極めて精緻な人間関係の機微が描かれています。
2年の歳月を経て再会したかつての恋人は、どこかやつれ、生活の疲れを背負っているように見えます。主人公はその姿に胸を締め付けられながらも、決して声をかけず、改札口へと消えていく背中を見送ります。ここには、過去の愛着と現在の現実との間に引かれた「心理的バウンダリー(境界線)」の葛藤が克明に投影されています。
「私だけが愛していたわけではない」というささやかな救いと、「それぞれ別の人生を歩んでいる」という冷徹な現実。この二面性が、雨に煙る情景描写と重なり合い、聴く者の記憶にある未完のノスタルジーを刺激し続けています。