上野の西郷像の制作を担当したのは、近代日本彫刻の巨匠・高村光雲(詩人・高村光太郎の父)です。光雲は等身大以上の迫力を生み出すため、下から見上げた際に頭部が小さく見えないよう遠近法を計算し、上半身をあえて大きめに設計する卓越した技巧を凝らしました。
一方、足元に寄り添う愛犬を手掛けたのは、動物彫刻の大家・後藤貞行です。西郷が溺愛した愛犬は薩摩犬の雌「ツン」でしたが、制作時にはすでにツンは亡くなっており、当時の薩摩犬の純血種を探し出すのに難航しました。結果として別の雄の薩摩犬をモデルに骨格が造形されたため、実は連れている犬の体格は本来のツンとは微妙に異なるという知られざる舞台裏が存在します。