ネット上の掲示板やSNSで「今家を買う人が信じられない」と言われる背景には、過去四半世紀にわたって続いた「超低金利と不動産上昇」という前提条件が根本から崩れ始めているという強い危機感があります。住宅情報サイトの相談窓口や大手不動産仲介の現場でも、購入検討者の間でかつてないほどの分断と迷いが生じています。具体的にどのようなリスクが指摘されているのか、4つの構造的要因から紐解きます。
第1の要因は、日銀利上げによる不動産市場への影響と住宅ローン金利上昇リスクです。長らくゼロ金利・マイナス金利の恩恵を最大限に享受してきた住宅ローン市場ですが、政策金利の引き上げに伴い、短期プライムレートに連動する変動金利の基準金利に見直しが入りました。現在借入を行っている人の7〜8割以上が変動金利を選択しているとされますが、金利がわずか1%上昇するだけで、毎月の返済額や総支払利息は百万円単位で膨らみます。
第2の要因は、新築マンション高騰の真相に潜むバブル懸念です。首都圏の新築マンション平均価格は1億円の大台を伺う水準に達し、一般的なサラリーマン世帯の平均年収の10倍を優に超える「年収倍率」を記録しています。この高騰は富裕層の買い替えや海外投資マネー、供給戸数の絞り込みによって牽引されてきた側面が強く、実需層の購買力からは明らかに乖離しています。買い手がこれ以上追随できなくなれば、価格調整が不可避になると見なされているのです。
第3の要因は、過度なレバレッジをかけたペアローン破綻リスク詳細まとめに見られる家計の脆弱性です。共働き世帯がそれぞれ満額近いローンを抱え、世帯年収1,000万〜1,500万円を前提に7,000万〜1億円の物件を購入するケースが急増しました。しかし、この設計は「夫婦双方が定年まで健康で、現水準の収入を維持し続ける」という危うい前提の上に成り立っています。出産や育児による減収、不測の病気、あるいは離婚といったライフイベントに直面した瞬間、返済計画が根底から瓦解する構造を抱えています。
第4の要因は、戸建て資産価値10年後の下落率をめぐるシビアな現実です。マンションが高騰しすぎた結果、妥協案として郊外の建売戸建てを選択する世帯が増加しました。しかし、日本の木造戸建て住宅は税法上の耐用年数が22年と短く、築10年を経過した時点で建物価値はおよそ半値以下に目減りします。さらに人口減少が進むエリアでは土地価格も下落し、「10年後に売却しようとしても残債を下回るオーバーローンに陥り、身動きが取れなくなる」というリスクが現実味を帯びて語られています。