地方都市における駅前開発の多くは商業ビルや集合住宅が主流だが、東静岡天然温泉 柚木の郷が選んだのは「空間美と本物志向の追求」だった。温浴業界(スーパー銭湯・日帰り温泉)が全国的なサウナブームやサステナブルツーリズムの波に乗って大きく変化を遂げるなか、この施設は単なる入浴施設にとどまらない文化的な価値を提供し続けている。
建物全体に漂うのは、古き良き日本建築の趣とモダンな快適性の融合だ。館内着に袖を通し、畳敷きの廊下を歩く。それだけで旅の情緒が満ちてくる。移動の合間にさっと汗を流すビジネスパーソンから、半日かけて心身を調律する休日の滞在客まで、多様なニーズを余裕をもって受け止めるキャパシティが頼もしい。