受験情報サイトやSNS上のアドバイスには、学習者の実力を見誤らせる重大なバイアスが含まれています。特に注意すべき2つの誤解を正します。
ひとつは、「例題が完璧になれば共通テストは8割超えできる」という誤信です。近年の共通テスト数学は、極めて日常的な事象を題材にした長い導入文や、生徒同士の対話文から数学モデルを抽出する「読解・情報処理力」が強く問われます。基礎問題精講の例題はクラシックな典型題で構成されているため、基礎知識としては必須であるものの、形式面での乖離が激しいのが現実です。共通テスト対策としては、本書を終えた直後に過去問や共通テスト実戦問題集を用いた「形式特化の演習」を挟まなければ、本番での高得点は望めません。
もうひとつは、「この本が終わったら次はすぐ過去問で良い」という早計な判断です。前述の通り、本書は基本パターンの網羅であって、複数の単元が絡み合う入試特有の「融合問題」への架け橋は担っていません。基礎問からいきなりMARCHや国公立二次の過去問に突入すると、解法の糸口が掴めず「手も足も出ない」状態になり、かえって時間を浪費します。『標準問題精講』や『国公立標準問題集CanPass』などの「入試標準レベル」を1冊挟むのが、遠回りに見えて最も確実な合格戦略です。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
教育アナリストの視点から、本書を選択すべき明確な判断基準を提示します。
- 強くおすすめできる受験生:
- 高校3年の春以降、あるいは浪人決定時点で、数学の全範囲を短期間で総復習したい人
- 青チャート等の分厚い網羅系参考書を開くたびに挫折感を味わってきた人
- 私立文系で数学を利用し、日東駒専〜MARCHレベルの合格最低点を効率よく確保したい人
- 慎重になるべき(他書を検討すべき)受験生:
- 中学数学や高校の教科書レベルの基本計算に不安が残る人(→『やさしい高校数学』や『入門問題精講』からスタートすべき)
- 高1・高2生で難関大・医学部を目指しており、数学に十分な学習時間を投資できる人(→網羅性の高い『青チャート』や『Focus Gold』をじっくり進める方が適している)