ネット上の簡易レシピで散見される「強火で一気に表面を焼き固めれば肉汁が閉じ込められる」という言説は、牛ステーキなど一部の赤身肉にのみ適用される誤解です。脂肪分をほとんど含まない鶏ささみに強火を当てると、表面のタンパク質が瞬時に凝固・収縮し、内部の水分を外へ押し出すポンプとして機能してしまいます。
ささみを焼く際の鉄則は、「中弱火で蒸し焼き」にすることです。フライパンに油を引いて肉を並べたら、弱めの中火で両面に軽く焼き色をつけ、大さじ1〜2の水または酒を回し入れてすぐに蓋をします。水蒸気で包み込むように加熱することで、中心温度を緩やかに上昇させ、パサつきの臨界点を超えずに火を通すことが可能になります。