広告論および消費者行動心理学の観点からメルティーキッスのCM戦略を総括すると、ここには極めて高度な「アンカー効果(条件づけ)」と「ノスタルジー消費」が働いています。
現代の消費者は、目まぐるしく変化する情報社会の中で無意識のうちに「変わらないもの」「安心できる季節の定点観測」を求めています。メルティーキッスは、新垣結衣という唯一無二のアイコンを15年にわたり固定することで、「新垣結衣のCM放送=立冬の合図」という強固なパブロフの犬的反射を社会全体に埋め込むことに成功しました。これは、飲料メーカーにおける山下達郎のクリスマスソングに匹敵するレベルの文化的定着です。
広告クリエイティブの視点から、このプロモーションを享受・評価する上での判断基準を整理すると以下のようになります。
【このCM展開を高く評価すべき層】
季節の変わり目に情緒や情緒的安定感を重視する生活者。毎年のルーティンとして冬の特別感を味わいたい層や、過度な刺激・奇抜さよりも上質なストーリーテリングと安心感を好む購買層。
【違和感や刷新を求める層の視点】
常に最新のトレンドや急進的なサプライズを広告に求める層。ただし、そうした層の声に安易に応えてタレントを交代させた場合、これまで長年積み上げてきた「冬の代名詞」としての莫大なブランド価値を一朝にして損なうリスクを孕んでいます。
ブランド論の鉄則は「定着した資産を企業側の飽きで安易に手放さないこと」です。明治が新垣結衣の起用を続ける決断は、保守的な現状維持ではなく、計算し尽くされた最も攻撃的で効果的なブランド防衛策であると評価できます。