ブブカの現役時代を象徴するのが、世界記録を「1センチずつ」更新していく巧みな戦略だ。1回更新するごとに支払われるボーナス賞金やスポンサー契約の仕組みをフルに活用したこの手法は、当時の陸上界における画期的なビジネスモデルとなった。一気に限界へ挑むのではなく、着実に記録を塗り替え続けることで、メディアの注目を長期にわたって集め続けたのである。
一部からは戦術的な小出しと揶揄されることもあったが、結果として陸上競技のプロフェッショナル化を急速に推し進める契機となった。スポーツにおける資金循環を生み出し、アスリートの社会的地位向上に寄与した功績は極めて大きい。自らのパフォーマンスの価値を極限まで高め、スポーツビジネスの構造そのものを変革した先駆者としての側面もまた、見逃せない偉業だ。