日本とハワイを航空便で往復した渡航者が一様に驚くのが、往路と復路における飛行時間の圧倒的なギャップです。成田や羽田を出発してホノルルに向かう行きは約6時間30分〜7時間30分で到着するのに対し、ホノルルから日本へ戻る便は約8時間30分〜9時間40分を要し、場合によっては10時間近くかかることもあります。「同じ区間を同じ機材で往復しているのに、なぜ復路だけ2時間以上も長くかかるのか」という疑問の答えは、上空1万メートルを吹き荒れる偏西風(ジェット気流)の存在にあります。
北半球の中緯度上空には、地球の自転と南北の温度差によって西から東へと向かう強烈な空気の流れ「偏西風」が常時循環しています。特に冬季になると、日本列島上空から太平洋にかけて時速200〜300kmを超える猛烈なジェット気流のコアが形成されます。
日本から東のハワイへ向かう往路便は、この強力な偏西風を後方から受ける形(追い風・テールウィンド)になります。対地速度が劇的に押し上げられるため、飛行機は驚異的なスピードで太平洋を横断し、わずか7時間前後でオアフ島へと滑り込みます。一方、ハワイから西の日本へ戻る復路便は、この巨大な風の壁に真っ向から立ち向かう形(向かい風・ヘッドウィンド)となります。風速数十ノットの逆風の中を無理に進めば燃料を異常消費し、機体への負荷も増大します。
そのため、復路便の運航管理者は偏西風の影響を最小限に抑えるよう、往路とは全く異なるフライトプランを組み立てます。ジェット気流の強風帯を避けるために北側のベーリング海峡寄りを大きく迂回するルートを取ったり、逆に南寄りの穏やかな気流帯を選んだりするため、飛行距離そのものが伸び、結果として9時間を超える長旅となるのです。季節による変動も顕著で、偏西風が弱まる夏季は往復の所要時間差が1時間程度に縮まる一方、偏西風が最盛期を迎える12月から2月にかけては所要時間の差が2時間半以上に拡大します。