国民的童謡として親しまれている「ぞうさん」は、1951年に雑誌『きりん』へ投稿され、團伊玖磨の作曲によって世に広まりました。愛らしいメロディの裏には、実は「偏見やいじめに対する毅然とした反論」という深い意図が込められています。
1番の歌詞「ぞうさん ぞうさん おはなが ながいのね」は、周囲の動物たちが「お前は鼻が長くて変だ」と子象をからかっている情景です。しかし、子象は傷ついたり怒ったりするのではなく、「そうよ かあさんも ながいのよ」と誇らしげに答えます。鼻が長いことは欠点でも恥ずかしいことでもなく、大好きな大好きな母さんと同じ、自分たちの大切な個性であると胸を張っているのです。
他者との違いを劣等感として捉えるのではなく、母への絶対的な愛情と自己のアイデンティティへの誇りへと昇華させる展開。まど・みちおは後年、「自分を愛せない者は他者を愛せない。象が象であることを喜ぶように、人間も自分が自分であることを喜ぶべきだ」と語っています。短く平易な言葉の中に、差別の否定と自他への深い愛が凝縮されています。