SNSや飼い主コミュニティにおいて「マルチーズのサマーカットで失敗した」という声が定期的に話題にのぼります。手入れの簡略化や熱中症対策を目的として極端に短くバリカンを当てるケースが見られますが、ここには獣医学的・トリミング技術的な落とし穴が存在します。
マルチーズはアンダーコート(下毛)を持たないシングルコートの犬種です。被毛には直射日光(紫外線)からデリケートな皮膚を守り、外気の熱や冷気を遮断する重要な役割があります。地肌が透けて見えるほど短く刈り込むと、かえって体温調節が困難になり、日光性皮膚炎や熱中症のリスクを引き起こす要因となります。これがマルチーズの短めバリカンにおける危険性として専門家が警鐘を鳴らす最大の理由です。
さらに見逃せないのが「犬のサマーカットによる毛質変化の理由」です。バリカンで毛根近くから毛を一気に短くカットすると、毛包(もうほう)が休止期に入り、施術後に毛が伸びにくくなる「バリカン後脱毛症(アロペシアX類似症状)」や、元々のシルキーなストレート毛が縮れた硬い毛質へと変化してしまう現象が確認されています。一度毛質が変わると元の美しい被毛に戻るまで年単位の時間を要することもあるため、安易な極短カットは避けるべき判断とされています。