「身の上に心配(4π)ある(r)参乗(^3)」。リズミカルで覚えやすいこの語呂合わせは、昭和から令和に至るまで日本の教室を支配してきた。しかし、この親しみやすさこそが最大の罠だ。語呂合わせに依存した生徒は、分母が3だったか4だったか、あるいは表面積の公式($S = 4\pi r^2$)と混同して半径の指数を2乗にしてしまうという凡ミスを頻発させる。
なぜ「3分の4」という奇妙な係数が現れるのか。その秘密は、球をミクロな「錐体(すいたい)」の集合体として捉え直す視点にある。球の中心から表面に向かって、無数の細長い四角錐や円錐がびっしりと詰まっている姿を想像してみてほしい。錐体の体積は「底面積 × 高さ ÷ 3」だ。この無数の錐体の高さを集めればすべて球の半径 $r$ になり、底面をすべて足し合わせれば球の表面積 $4\pi r^2$ になる。つまり、球の体積は「表面積($4\pi r^2$)× 半径($r$)÷ 3」となり、自然と $\frac{4}{3}\pi r^3$ が立ち現れる。公式を力尽くで記憶する必要など、最初からなかったのだ。