ネットニュースやSNS上では、時に「氷川きよしがオネエ化した」「性転換をしたのか」といった安易なゴシップ的ラベルが貼られがちです。しかし、これらの見方は本質を大きく見誤っています。
まず第一に、氷川きよし自身は「戸籍上の性別変更や性別適合手術」について一切言及しておらず、生物学的な性を否定しているわけではありません。公の場で発信しているのは、社会が男性に押し付ける「男らしさ」、女性に押し付ける「女らしさ」という役割規範の解体です。すなわち、ゲイやトランスジェンダーといった枠組の前に、「男性がメイクをしてもいい」「美しいドレスを着てロックを歌ってもいい」というジェンダーレス(性差にとらわれない表現)の実践なのです。
また、過去の週刊誌報道に端を発する恋愛対象や結婚観を巡る噂(俳優・松村雄基氏との関係など)についても、本人が公式に特定のスキャンダルを追認した事実はありません。インタビューの真相を精査すると、「誰かを愛することに男も女も関係ない」「今は歌とステージで自分を表現し切ることが人生の最優先であり、枠にはまった結婚観には縛られない」という、個の尊厳を重視するスタンスを一貫して保っています。消費的な「オネエいじり」とは明確に一線を画した、極めて純度の高い実存的闘争であったことが分かります。