メジャーリーガーとして名声と莫大な富を手に入れた寿也が、なぜ家庭崩壊という結末を迎えてしまったのか。その根本的な原因は、彼が小学生時代に経験した両親による置き去り(夜逃げ)事件に端を発しています。
祖父母に引き取られ、極限の孤独の中で「プロ野球選手になって見返してやる」という執念だけを支えに生きてきた寿也。彼にとって野球は自己防衛のための絶対的な鎧であり、自己承認を得る唯一の手段でした。しかし、この生い立ちがもたらした愛着形成の不全と重度のトラウマが、結婚生活において致命的な影を落とすことになります。
「完璧主義」が招いた家庭内の孤立
寿也は本来、非常に几帳面で知性的な性格です。しかしその反面、「家族に捨てられた自分」という劣等感を払拭するため、常に完璧な選手、完璧な人間であろうとしすぎました。悩みを他者に打ち明けることができず、精神的な負担をすべて胸の内に溜め込んだ結果、家庭内でも妻に対して心を閉ざしてしまったのです。
元妻からすれば、どれほど尽くしても心を開いてくれない夫、家庭よりも野球を最優先し感情の通わない生活に耐え切れなくなったのは必然と言えます。最終的に妻側から愛想を尽かされる形で別居、そして正式な離婚に至り、息子の光の親権も母親側が持つこととなりました。