指にしこりが触れた瞬間、誰もが脳裏をよぎるのが「悪性腫瘍(がん・肉腫)ではないか」という不安です。実際の臨床統計において、皮膚の下のしこり 癌の確率は決して高い数値ではありません。皮膚科や形成外科の外来を訪れる皮下結節・腫瘤性病変のうち、悪性である割合は全体のおよそ1%未満〜2%程度とされています。日常遭遇するしこりの大半は良性疾患です。
しかし、確率は低くとも見落としが許されないのが、筋肉や脂肪、神経などの非上皮性組織から発生する「軟部肉腫(悪性線維性組織球腫、脂肪肉腫など)」です。日本整形外科学会や日本癌治療学会の診療ガイドラインでも示されている、皮下腫瘍 悪性の特徴には以下の危険徴候(レッドフラッグ)が存在します。
第一に「大きさ」です。直径が5cmを超えるしこりは、悪性を疑って精密検査を行う基準とされています。第二に「増大スピード」です。何年も大きさが変わらないものは良性の公算が高いのに対し、数週間から数ヶ月の単位で明らかにサイズが倍増している場合は即時受診が必要です。第三に「可動性の低さと硬さ」です。石のように硬く、深部の筋肉や骨に張り付いて指で押しても全く動かない場合、浸潤性増殖を示す悪性病変の特徴と合致することがあります。
また、皮膚の下のしこり 押すと痛い状態の鑑別も重要です。押して痛む場合、大半は粉瘤が炎症を起こした「炎症性粉瘤」や、毛包周囲の急性化膿性炎症(せつ・よう)ですが、血管が豊富に絡みつく「血管平滑筋腫」や、末梢神経から発生する「神経鞘腫」といった有痛性良性腫瘍の可能性も考慮されます。強い圧痛があるからといって必ずしも悪性とは限らず、組織の充血や神経圧迫が痛みを誘発しています。