東京のライブシーンにおいて、千駄木というロケーションは一見すると異端に映るかもしれません。渋谷や下北沢、高円寺といった若者文化の集積地ではなく、あえて文京区の落ち着いた街並みに拠点を置く「bar isshee」ですが、アンダーグラウンド・ミュージックを愛する層にとっては「東京で最も純度の高い音が聴ける聖地」として認知されています。
主宰するのは、自身も即興演奏家・音楽家として活動する店主のイッシー(isshee)氏。彼が2010年代初頭から築き上げてきたこの空間は、単なる飲食店やハコ貸しスペースの枠に収まりません。商業的なポピュラリティとは完全に距離を置き、演奏者の偶発的なインスピレーションや極限のノイズ、微細なアコースティックの響きをそのまま受け止める「実験室」として機能しています。
国内外のツアーミュージシャンが東京公演の拠点としてここを選ぶケースも多く、ベルリン、ロンドン、ニューヨークなどの前衛音楽シーンともダイレクトに接続しています。装飾を削ぎ落としたミニマルな空間だからこそ、演者の指先の動きや息遣い、エフェクターの踏み込みひとつまでがダイレクトに伝わり、観客は「音が生まれる瞬間の緊張感」に否応なく巻き込まれることになります。