この表現の土台にあるのは、誰もが知る三度の飯より〇〇が好き ことわざの構文です。本来は「1日3回の規則正しい食事を摂ること以上に、ある物事に熱中しているさま」を指し、「三度の飯より釣りが好き」「三度の飯より読書が好き」といった形で使われてきました。生きるために不可欠な食事を比較対象に置くことで、対象への熱中度を強調するレトリックです。
では、「三度の飯より飯が好き」という誰の言葉なのか、決定的な元ネタは存在するのでしょうか。調査を進めると、特定の文豪や歴史上の偉人が残した記録ではなく、1990年代後半から2000年代初頭にかけてのテキストサイト黎明期や、お笑い芸人のボケ、あるいは漫画・アニメの食いしん坊キャラクターのセリフとして自然発生的に芽生えたことが判明しています。三度の飯より飯が好き アニメのワンシーンで登場人物が放ったセリフと記憶している人も少なくありませんが、実際には既存のアニメ(『銀魂』や『クレヨンしんちゃん』など)のノリに近いパロディとして、同人誌やネット掲示板を起点に拡散された側面が濃厚です。
このフレーズを一躍ポピュラーな存在に押し上げた立役者の一つが、ヴィレッジヴァンガードなどで定番化した三度の飯より飯が好き Tシャツをはじめとする文字Tシャツカルチャーです。胸元に太い明朝体や毛筆体で刻まれたその字面は、「意味が通じそうで通じないシュールさ」を醸し出し、着る人のキャラクターを一瞬で伝えるアイコンとして若者やサブカル層に広く受け入れられました。さらに派生形として三度の飯より米が好きという、より品種や穀物そのものへの愛を強調したバージョンも生まれています。