ネット上の情報や一般的なイメージにおいて、テキサスバーベキューにはいくつかの根深い誤解が存在します。取材をもとにそれらの偏見を正していきます。
最大の誤解は、「バーベキューソースをベタベタに塗って食べる大味な料理」という先入観です。前述の通り、テキサス中部の伝統的なスタイルにおいて、主役はあくまで肉と煙の風味です。上質なスモークハウスでは、まずは何もつけずにそのまま食べることを推奨されます。卓上に用意されているBBQソースは、あくまで味変や好みのアクセントに過ぎません。
もう一つの盲点は、調理法における「直火」と「間接熱」の違いです。日本の家庭やアウトドアで行われるBBQの多くは、炭火の直上に網を置き、肉を「グリル(直火焼き)」する手法です。これに対してテキサスBBQは、燃焼室(ファイアボックス)で発生させた煙と温風を隣の調理室(クッキングチャンバー)に送り込み、対流熱だけで火を通す「スモーク(間接燻製)」です。肉が直火に触れることは一切ありません。
この決定的な違いを理解せずに来店すると、「注文してから肉が焼けるまでに時間がかかるのではないか」「煙で服が焦げ臭くなるのではないか」と不安に思いがちですが、実際は長時間の仕込みを終えた肉をカットして提供するため、サーブ時間はむしろスピーディーであり、店内も洗練された排気システムによって快適に保たれています。