日本の名門ホテルニューオータニが提供するシグネチャーパンケーキは、日本の製菓史におけるひとつの到達点と言える。和讃盆糖や国産小麦、リコッタチーズを巧みに組みあわせたその仕上がりは、単なる朝食の域を遥かに超えた至高の表現だ。
日本を代表する最高峰のパティシエである辻口博啓氏も、生地中の水分保持力とグルテン生成のコントロールの重要性をたびたび指摘している。小麦粉を混ぜ過ぎると粘り気が出て食感が重くなるため、粉を振るい入れてからは決して練らない。素材の物理特性を理解し切ったプロの知恵が、口の中で溶けるようなあの儚い食感を支えているのだ。