SNSや知恵袋、大手ヘルスケア掲示板を調査すると、「骨盤が歪んで腰の骨が左右非対称に出っ張っている」「整体で骨盤が5センチ歪んでいると言われて不安になった」といった投稿が後を絶ちません。現場の医療従事者や患者の証言から、歪みの実態を検証してみましょう。
都内の大学病院で脊椎外科を専門とする医師は、取材に対して次のような現場の実情を明かしています。
「外来で『骨盤が大きく歪んで骨が飛び出している』と訴える患者さんの骨盤レントゲンを撮影しても、骨そのものが物理的にねじ曲がっているケースはまずありません。多くの場合、骨盤を左右から支える中殿筋や大腰筋の緊張バランスが崩れ、一時的に骨盤が前傾あるいは左右に傾斜している状態です。骨が変形したのではなく、姿勢と筋出力の偏りが『歪み』として表出しているのです」
また、都内の大手整形外科クリニックでリハビリを担う理学療法士は、患者の触診時に見られる傾向についてこう語ります。
「仰向けに寝て足を組む癖がある方や、長時間のデスクワークで片側に重心を乗せる癖がある方は、骨盤の上前腸骨棘(ASIS)の高さが左右で1〜2センチずれることは日常茶飯事です。患者さんご自身が『出っ張りが左右で違う』と感じるのは、皮膚直下のランドマークが骨盤の傾斜によって持ち上げられているため。骨の異常というより、骨盤周囲筋の滑走不全や硬縮が根底にあります」
知恵袋やコミュニティサイトでも、「骨盤矯正に通い続けたが痛みが取れず、総合病院で精密検査を受けたら仙腸関節炎だった」「腰の出っ張りを強く指圧されて逆に炎症が悪化した」という苦い告白が散見されます。「骨盤が歪んでいる」という曖昧な言葉に惑わされず、どの骨と筋肉の連動が制限されているのかを客観的に見極める視点が不可欠です。