熱を下げたい一心で、自宅の薬箱にある普段使いの鎮痛剤や、棚に並ぶ強力な市販薬を安易に口にする行為には極めて重大なリスクが伴います。特に警戒しなければならないのが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に分類される解熱鎮痛成分です。
日本小児科学会をはじめとする複数の医学会および厚生労働省の注意喚起において、インフルエンザ感染時に以下の成分を服用することは原則禁止、あるいは厳重な注意が必要とされています。
最も危険視されているのが、小児や未成年における「インフルエンザ脳症」および「ライ症候群」との関連性です。インフルエンザ脳症は、ウイルス感染に伴う過剰な免疫反応などによって急激な脳浮腫をきたす予後不良の急性疾患ですが、アスピリン(アセチルサリチル酸)やジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸などのNSAIDsを服用することで、脳症の発症率や死亡率が跳ね上がることが過去の臨床研究・疫学調査で証明されています。
「ロキソニン(ロキソプロフェンナトリウム水和物)」や「イブ(イブプロフェン)」に関しても、小児への投与は禁忌とされているほか、成人のインフルエンザ罹患時であっても血管内皮障害や腎不全のリスク、過度な免疫抑制を引き起こす懸念があるため、医師の慎重な管理下でない限りの自己判断服用は避けるべきというのが医療現場の共通認識です。普段の頭痛や生理痛で飲み慣れているからといって、インフルエンザの高熱時にロキソニンを飲むことは極めてリスキーな行為と言わざるを得ません。