建築設計の専門家を一切雇わず、サラ自身の気まぐれなスケッチのみで拡張されたウィンチェスターハウスの間取りは、合理的な住居の概念を完全に破壊しています。最盛期には7階建てに達したものの、1906年のサンフランシスコ大地震で上層階が崩壊し、現在は4階建ての状態で保存されています。それでも残存する空間はまさに迷路そのものです。
館内の最大の特徴は、空間認知を混乱させる「罠」のような設計です。最も有名な行き止まりの階段は、上階へと続いているように見せかけて進むと、天井板に直突して立ち往生します。また、2階の外壁に突如として現れるドアノブを回すと、そこには敷居の外にベランダも足場もなく、地面に向かってまっすぐ落下する「どこにも通じないドア」が存在します。悪霊を惑わせて撒くための仕掛けと解説される一方、現地で実見すると、その不条理な空間配置に背筋が寒くなるのを禁じ得ません。