「5万回斬られた男」という異名を持つ怪優・福本清三。彼の名が国境を越えて世界中に轟いた最大の転機が、エドワード・ズウィック監督の映画『ラスト サムライ』への出演だった。オーディションで圧倒的な存在感を解き放った彼は、主人公を言葉もなく見守る無口なサムライ役に抜擢された。
現場で繰り広げられた殺陣の精度は、海外の撮影スタッフやキャスト陣を深く驚嘆させた。相手の間合いを極限まで引きつけ、一瞬の隙に美しく散っていく凄絶な殺陣技術は、ハリウッド映画の壮大なスケール感の中でも異彩を放っていた。英語を一切話さず、目線の動きと佇まいだけで感情を表現するその姿は、フィルムの隅々まで研ぎ澄まされた武士の美学を染み込ませたのである。