本作の魅力を語る上で欠かせないのが、キャスト陣の鬼気迫る名演と、物語を彩る数々の象徴的シーンです。とりわけ観客の記憶に鮮烈に刻まれているのが、人間界の食べ物である「ピーナッツバター」をジョーが初めて口にするシーンです。
死神という全知全能の存在でありながら、スプーン一杯のピーナッツバターを子どものように夢中で舐め取るブラッド・ピットの無邪気な芝居は、彼が「人間らしさ(味覚や快楽)」に目覚めていく重要な転換点を見事に体現していました。完璧な造形美を誇る当時のブラッド・ピットだからこそ、人間界の些細な喜びに驚嘆する死神のピュアネスが際立っています。
また、ウィリアム役のアンソニー・ホプキンスが娘スーザンに向けて語りかける愛についてのセリフは、映画史に残る名言として語り継がれています。
「愛とは情熱だ。相手なしでは生きられないという衝動、我を忘れるほどの狂気だ。雷に打たれるような愛を見つけるんだ。それを知らずに生きるのは、生きていないのと同じだ」
この言葉はスーザンの人生を動かすだけでなく、死神自身にも「真実の愛とは何か」を教え込む伏線として機能しており、脚本の緻密さに圧倒されます。