神戸市須磨区の板宿商店街を語るうえで外せないのが、幾多の苦難を乗り越えてきた強靭な歴史です。戦前から市場として栄え、戦後の混乱期からの復興、そして1995年の阪神・淡路大震災による甚大な被害をも克服してきました。激しい揺れによってアーケードや家屋が被災しながらも、商店主たちは手を取り合い、見事な復興を遂げて現在のアーケード街を再建しました。
この商店街が持つ独特の魅力は、随所に漂う歴史ある昭和レトロの空気感と、現代的な利便性が奇跡的なバランスで同居している点にあります。アーケードを見上げれば、雨風を遮る近代的な開閉式ドーム屋根が広がり、足元には威勢の良い掛け声が響く青果店、出汁の香りを漂わせる老舗うどん店、昔ながらの対面販売を守る精肉店が軒を連ねています。
地域活性化のシンボルとして住民から絶大な愛着を持たれているのが、公式マスコットキャラクターの「いたやどかりちゃん」です。ヤドカリをモチーフにした愛嬌ある姿は、商店街の看板や案内板、公式グッズに登場するだけでなく、季節ごとの板宿本通商店街のイベントや祭りにも姿を現し、子どもたちの歓声を集めています。毎夏恒例の夜市や季節のセールでは、三世代で手を繋いで歩く家族連れの姿が絶えず、単なる「モノを買う場」を超えた地域のコミュニティ拠点としての役割を強固に保っています。