「半年以上も近所のクリニックで膝にヒアルロン酸注射を打ち続けていたが、一向に良くならなかった。セカンドオピニオンで骨盤の精密X線を撮影して初めて、重度の変形性股関節症であることが判明した」。都内の関節専門クリニックで理学療法士として20年以上のキャリアを持つチーフセラピストは、取材に対して現場のリアルな実態を明かした。患者が痛みを覚える部位と、痛みを引き起こしている病変の部位が一致しないことは、運動器診療において決して珍しい光景ではない。
SNSや医療相談プラットフォームに寄せられた体験談を分析すると、「歩行時の違和感を膝の衰えだと思い込み、スクワットを無理に続けた結果、股関節の激痛で立ち上がれなくなった」という悲痛な声が散見される。骨盤の傾斜や中殿筋の筋力低下がある状態で無理な運動を重ねると、大腿骨の外側を走る腸脛靭帯が過度に緊張し、膝外側の摩擦痛を引き起こす腸脛靭帯炎を併発する。さらに、痛みを避けるための不自然な歩き方(跛行)が腰椎へ歪みを波及させ、最終的には坐骨神経痛まで併発して下肢全体の機能不全に陥る患者が後を絶たない。