消費者の日常体験においてもっとも実感される物理的な違いは、皮の剥きやすさと薄皮の厚さにあります。果皮の外側にある油胞を含んだ着色層を「フラベド」、内側の白い繊維層を「アルベド」と呼びますが、温州みかんはこのアルベド層が成熟に伴ってスポンジ状に緩み、果肉(じょうのう房)との間に空気の層が生まれる特性を持っています。そのため、道具を使わずに素手で簡単に外皮を剥離させることが可能です。
対してオレンジ類は、アルベドが果肉の外周組織と極めて強固に密着しています。手で無理に剥こうとすると爪が果肉に食い込み、果汁が飛び散ってしまうのはこの組織構造に起因します。一般的に「スマイルカット」と呼ばれるくし形切りやくし形からのスライスが推奨される理由は、この強靭な果皮構造にあります。
さらに、1房ずつを包むじょうのう膜(薄皮)の厚さも決定的に異なります。温州みかんのじょうのう膜は細胞壁が非常に薄く、咀嚼時に口の中に繊維感が残りません。そのまま食べても胃腸に負担をかけにくいしなやかさがあります。これに対し、オレンジのじょうのう膜はセルロースやヘミセルロースが発達しており、しっかりとした厚みと弾力を持っています。オレンジを生食する際に「房から果肉(砂嚢)だけをナイフで切り出すカルチェ」というフレンチ技法が定着しているのは、この薄皮の硬さを回避するためです。