単なる珍味にとどまらず、多くの人々を虜にする背景には、明確な味覚科学のメカニズムが存在します。カツオとマヨネーズが完璧な調和を生み出す理由は、主に以下の3点に集約されます。
第一に、「脂質の補完作用」です。春に北上する「初鰹(上り鰹)」は、脂質含有量がわずか1%未満と極めて低く、さっぱりとした赤身の旨味が特徴です。ここに植物油と卵黄からなるマヨネーズを加えることで、秋の「戻り鰹(脂質10%以上)」にも匹敵する濃厚なコクと滑らかな舌触りを人工的に生み出すことができます。淡白な赤身に上質な脂の乗りを付与する調理法として、極めて理にかなっています。
第二に、「乳化作用による臭み消し(マスキング効果)」です。カツオは鉄分やヘモグロビンを多く含む赤身魚ゆえ、鮮度が落ちると酸化した脂質やトリメチルアミンによる特有の生臭さが発生しやすくなります。マヨネーズの主成分である油と卵黄が舌の味蕾(みらい)をコーティングし、同時に含まれる醸造酢の酸が揮発性の魚臭を中和するため、生臭さが劇的に低減されます。
第三に、「アミノ酸の相乗効果」です。カツオの筋肉組織に凝縮された「イノシン酸」と、マヨネーズや醤油に含まれる「グルタミン酸」が口の中で結合することで、人間が感じる旨味は単体で摂取したときの7〜8倍にまで跳ね上がります。