多くの視聴者が抱く「なぜあれほどの人気タレントがテレビから消えたのか」という疑問。その発端は、2004年からスタートしたNHKの大型企画『列島縦断 鉄道12000キロの旅』『列島縦断 鉄道乗りつくしの旅〜JR20000km全線走破〜』、さらにはヨーロッパや中国を巡る海外鉄道旅シリーズにあります。
当時、番組は異例の高視聴率を記録し、彼の飾らない語り口や現地の人々と心を通わせる姿は社会現象となりました。しかし、その輝かしい成功の裏で、関口知宏の心身には限界に近い負荷がかかっていました。
長期にわたる過密ロケでは、毎日が移動と撮影の連続であり、プライベートな時間や思索の余白は完全に奪われていました。当時の特番インタビューや自著・手記で語られた「常にカメラに追われ、他者の期待に応え続ける旅人像を演じることへの精神的疲弊」は深刻なものでした。体重の急激な減少や極度の消耗を経験した彼は、旅の完結とともに自らの生き方を根本から見つめ直すことになります。
さらに大きかったのが、制作サイドが求める「爽やかな二世タレント」「万能のレポーター」というパブリックイメージと、彼自身が志向する「生粋の表現者・クリエイター」としてのアイデンティティとの乖離です。消費されるタレントであり続けることを拒み、自分の言葉、自分の音、自分の色彩で生きるために、あえてテレビの第一線から自発的に身を引く選択を下したのが真相です。