客観的に見ればリスクが高く、平穏な選択肢が存在するにもかかわらず、なぜ人間は自ら「茨の道」を選択するのでしょうか。行動経済学やモチベーション理論の観点から、その内面心理には明確な合理性が存在します。
エドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱した「自己決定理論(Self-Determination Theory)」によれば、人間の幸福感や内発的動機づけは「自律性(自分で決めた感覚)」「有能感(成長している実感)」「関係性(他者への貢献)」が満たされたときに最大化します。他者から与えられた安全なルートを進むことよりも、自らの意志で選んだ険しい道を突破することのほうが、圧倒的な自己効力感と独自の市場価値(希少性)を生み出します。
安易な道(コモディティ化された選択肢)を選び続けた先にあるのは激しい同質化競争であり、結果として長期的な脆弱性を抱えることになります。「短期的な苦難(茨)」を引き受けることで「長期的な優位性(独自の強み)」を獲得しようとするのは、極めて戦略的な生存戦略といえます。
【プロの結論】茨の道を選ぶべき人・慎重に避けるべき人の判断基準
困難な道へ飛び込むべきか否かを判断する際、感情的な熱量だけで決断すると手痛い挫折を招きます。以下の基準で冷静に現状を棚卸しすることが不可欠です。
- 茨の道を選ぶべき人の条件:
- 失敗した際のリスク(金銭的・キャリア的損失)の最大値が把握できており、致命傷を回避する安全網がある。
- 「他者からの賞賛」ではなく、「そのプロセス自体に強い意義を感じる」内発的動機がある。
- 困難に直面した際、他責にせず柔軟に行動を修正できる心理的柔軟性(レジリエンス)を備えている。
- 今は慎重に避けるべき人の条件:
- 周囲への見栄や「苦労している自分に酔う」自己犠牲の陶酔感が動機になっている。
- 精神的・肉体的なエネルギーがすでに枯渇しており、基礎的な体力が不足している。
- 「苦労さえすれば必ず報われる」という精神論に依存し、勝算や撤退基準(損切りライン)を設定していない。