かつて「中国で著作権侵害を訴えても門前払いを食らう」と諦め顔で語られていた時代は、法廷闘争の激化とともに決定的な転換点を迎えました。その代表例が、円谷プロダクションが長年にわたり戦い続けてきた偽ウルトラマン裁判です。
事の発端は、昭和期に交わされたとされる「海外利用権の譲渡契約書」の真偽を巡る争いでした。中国企業側は正当な権利者から許諾を得たと主張し、2017年にはCG映画『鋼鉄飛竜 奥特曼崛起(ドラゴンフォース)』を制作・公開。顎が尖り、筋骨隆々となった異様なウルトラマンを無許可で登場させ、日中双方の特撮ファンを騒然とさせました。円谷プロはこの暴挙に対し、日本、米国、そして中国本国の裁判所において全面的な法廷闘争を展開。米国の連邦最高裁判所で契約書の無効(偽造)が確定したことを足がかりに、中国の法廷においても粘り強く権利侵害を立証し、2020年代に入って中国最高人民法院(最高裁に相当)において円谷側の勝訴判決が相次いで確定しました。
この裁判劇は、中国における中国著作権侵害訴訟の潮流が根本から変わったことを世界に知らしめました。中国政府が2014年以降、北京、上海、広州に知的財産専門の裁判所(知財法院)を相次いで設置したことで、司法の専門性と独立性は飛躍的に向上しました。現在では、外国企業が提訴した著作権侵害訴訟における勝訴率は極めて高い水準を維持しています。
中国の民法典および改正著作権法では、悪質な権利侵害に対して「懲罰的損害賠償」が導入され、実損害額の最大5倍までの支払いが命じられる仕組みが確立しました。日本企業が正規の証拠保全を行って提訴した場合、勝訴判決を勝ち取れる確率は極めて高くなっており、かつてのような「堂々とパクって居直る」ビジネスモデルは法脈的にも完全に破綻しています。