盛り上がりを平坦化させる上で劇的な効果を持つケナコルト注射ですが、医療機関の口コミやSNS上では「注射を打ったら皮膚がクレーターのように凹んでしまった」という深刻な体験談が散見されます。これはケナコルト注射の凹むリスクとして臨床上広く認識されている「ステロイド局所萎縮」です。
ケナコルト(トリアムシノロンアセトニド)は水に溶けにくい懸濁液であり、局所に長期間留まることで強力な抗炎症・線維抑制作用を発揮します。しかし、薬液の濃度が高すぎたり、注入量が過多であったり、あるいは皮膚の浅い層(真皮浅層)や皮下脂肪組織に誤って漏出・注入された場合、コラーゲン線維だけでなく正常な皮下脂肪組織まで萎縮させてしまいます。これが局所的な陥凹変形を引き起こすメカニズムです。
実際の臨床現場において、熟練した医師は原液をそのまま投与することは稀です。生理食塩水や局所麻酔薬で適切な濃度(通常2.5mg/mL〜5mg/mL程度)に希釈し、極細の注射針(30G〜32G)を用いて、病変の芯(真皮深層の硬結部)へミリ単位の正確さで少量ずつ注入します。注入時に組織の強い抵抗感を確認しながら硬結内にのみ留める精密な手技が要求されます。
仮に萎縮による陥凹が生じた場合でも、多くのケースでは6ヶ月から1年程度の時間をかけて脂肪組織が徐々に回復し、凹みが目立たなくなります。しかし、リスクを最小限に抑えるためには、一度の注射で一気に平坦化させようと焦らず、3〜4週間以上の間隔を空けて段階的にボリュームをコントロールしていく治療姿勢が不可欠です。