「粉薬なのだから、コップ一杯の水に溶かして飲んだほうが喉全体に行き渡るのではないか」――そう考えたことのある方は決して少なくありません。しかし、株式会社龍角散の公式製品説明書およびQ&Aにおいて、この飲み方は明確に否定されています。公式の見解として示されているのは「龍角散は水なしでお飲みいただくお薬です」という極めてシンプルかつ厳格なルールです。
一般的な内服薬(錠剤やカプセル、多くの総合感冒薬)は、水とともに胃に送り込まれ、胃や小腸から毛細血管へと吸収されて血液循環に乗ることで全身に薬効を発揮します。しかし、第3類医薬品に指定されている龍角散の粉末製剤および龍角散ダイレクトは、消化管から吸収させて効かせる薬剤ではありません。喉の患部粘膜に粉末が直接付着し、その場で局所的に作用することを目的に設計された「外用薬に近い内服薬」という特異な構造を持っています。
もしコップの水に溶かして飲んだり、粉末を口に含んだ直後に水で胃へ一気に流し込んだりしてしまうと、有効成分は喉の粘膜に留まることなく一瞬で洗い流されて胃酸の海へ直行します。ネット上で「水で飲むと効果が半減する、あるいは激減する」と囁かれている噂は、都市伝説の類ではなく、薬剤設計上の完全な事実なのです。生薬が喉に触れている時間こそが治療時間であるため、水で流す行為は薬の価値を自ら放棄しているに等しいと言えます。