日本国内の園芸界や盆栽界では、植物学とは別に厳格な園芸における呼び分け基準が存在します。
盆栽の展示会や愛好家の間では、イロハモミジ、ヤマモミジ、オオモミジの3系統に連なる園芸品種群を「モミジ」と呼び、それ以外のトウカエデ、ハウチワカエデ、メグスリノキなどは一括して「カエデ」と呼ぶ慣例が徹底されています。盆栽における品種の違いは仕立ての美しさに直結し、モミジは枝先の細やかなほぐれ(小枝の繊細さ)を鑑賞し、カエデは力強い幹肌や独特の葉形を鑑賞する対象として明確に住み分けられています。
一方、グローバルな視点に立つと全く異なる構図が見えてきます。英語表現mapleの違いを調査すると、英語圏では「もみじ」に対応する独自の単語が存在せず、すべて「Maple」と総称されます。あえて日本のモミジを特定する場合は「Japanese Maple(学名:Acer palmatum)」と表現されます。
北米を代表するメープルシロップとサトウカエデ(Sugar Maple)も、その名の通りカエデ属の樹木です。早春にサトウカエデの樹幹から採取される樹液は糖度2〜3%ですが、これを糖度約66%まで煮詰めることで黄金色のメープルシロップが完成します。カナダの国旗に描かれているシンボルマークもサトウカエデの葉であり、西洋においては「鑑賞用の赤」だけでなく「恵みをもたらす樹木」としてのアイデンティティが強く根付いています。