著者の岩井俊雄氏は、もともとメディアアートの第一線で活躍してきた異色のクリエイターだ。彼が絵本の世界へ足を踏み入れたきっかけは、自身の子供たちとの日々のコミュニケーションだったという。
「10階ごとに異なる生き物が住む高い塔があったら面白いのではないか」。そんな娘との何気ない会話から着想を得た本作。従来の絵本が横開きの画面を基本としていたのに対し、縦に開くスタイルを採用した理由は極めて明快だ。空へとぐんぐん伸びていく100階建てのスケール感を、視覚的かつ直感的に体験させるためである。
1階から10階まではトチカガミ、11階から20階まではリス……と、10階ごとに異なる動物たちの暮らしが描かれる。各部屋の家具や生活道具、住人の表情にいたるまで、岩井氏の手によって狂おしいほどの細部へのこだわりが注ぎ込まれた。親が「早く次のページへめくりなさい」と促しても、子供は1つの階で延々と立ち止まる。そこに詰まっているのは、作者自身の旺盛な遊び心と、子供の観察力を信じ抜く誠実な眼差しだ。