1990年代初頭、スタジオジブリは大きな岐路に立たされていた。『風の谷のナウシカ』から『魔女の宅急便』に至るまで、巨匠・宮崎駿と高畑勲の圧巻の才能によってアニメーション界を牽引してきた一方で、「次世代の育成」という重い課題を抱えていたのである。その回答として企画されたのが、氷室冴子の青春小説を原作とするTV用長編作品だった。
指揮を執ったのは、当時30代前半だった望月智充監督。スタジオジブリの制作ラインを解放し、「若手の手だけで、安く・早く・クオリティの高いものを作る」という野心的な命題が課された。しかし、結果として制作費も期間も大幅にオーバーすることになる。完璧主義の血は、若手クリエイターたちにも容赦なく受け継がれていたのだ。この泥臭くも妥協なき情熱が、画面の端々にまで宿る異例の密度の正体である。