十日恵比須神社の正月大祭を語る上で欠かせないもう一つのハイライトが、1月9日(宵えびす)の午後3時前後に執り行われる「徒歩(かち)詣り」です。
徒歩詣りとは、博多の花柳界に所属する博多芸妓(げいぎ)衆が、稲穂の簪(かんざし)を挿した正装の黒紋付姿で神社へ参拝に訪れる伝統行事です。浄瑠璃太夫や三味線の地方(じかた)を先頭に、番傘を差し掛けられた芸妓衆がしずしずと境内を練り歩く様は、まさに息をのむような美しさと格式を誇ります。
芸妓衆が本殿に進み、今年1年の芸道上達と開運を祈願してかしわ手を打つ瞬間、周囲を取り囲んだ見物客やカメラマンから感嘆のため息が漏れます。博多那の津の伝統文化が今なお生きた形で受け継がれていることを肌で実感できる、大祭屈指の名場面です。
さらに参拝の楽しみを彩るのが、東公園の参道沿いに延々と軒を連ねる400軒超の露店・屋台群です。屋台の営業時間は各店舗によって前後するものの、大祭期間中はおおむね午前10時頃から深夜22時〜23時頃まで営業しています(9日夜から10日未明にかけては徹夜営業を行う店舗も多数存在します)。
名物の梅ヶ枝餅や博多ならではの焼き鳥、はしまき、温かいもつ煮込みなど、冬の夜風の中で湯気を立てる屋台グルメは、参拝後の冷えた身体を温めてくれます。参拝の厳粛さと屋台の祝祭感が共存する空間こそが、博多っ子に愛され続ける理由です。