作中において、鬼の始祖である鬼舞辻無惨が数百年にわたり恐怖に震え、記憶の細胞レベルで恐れ続けた唯一の存在が継国縁壱です。無惨は初対面の瞬間、縁壱を「異様」「神仏の加護を一身に受けた化け物」と認識しました。なぜ縁壱だけが、他の全柱が束になっても敵わなかった無惨を瞬時に切り刻むことができたのでしょうか。
最大の要因は、縁壱が生まれつき「透き通る世界」を視認し、完全な抜刀技術と呼吸法を体得していた点にあります。一般の剣士が過酷な鍛錬と死線の果てにようやく辿り着く境地に、縁壱は7歳の時点で平然と立っていました。体内の筋肉の収縮、血流、骨の動きが透けて見えるため、相手の攻撃予兆を先読みすることすら必要とせず、回避と同時に致命部を断ち切ることが可能だったのです。
さらに、無惨との初交戦時、縁壱は無惨の体内に「7つの心臓と5つの脳」が蠢いている異常構造を瞬時に看破しました。その刹那に編み出されたのが、鬼滅の刃始まりの呼吸である「日の呼吸」の十三番目の型です。無惨が放つ無数の触手による即死攻撃を紙一重ですべてかわし、全身の急所を同時に両断。赫刀(しゃくとう)によって再生能力を完全に封じ込め、無惨に「首を刎ねても死なない」と悟らせる間もなく肉体四散へと追い込みました。
アニメ版で声を担当した声優・井上和彦氏が特番インタビュー等で語った「縁壱は怒りで戦っているのではなく、深い哀愁と祈りの境地で刀を振るっている」という解釈通り、我欲や殺意が完全に抜け落ちた「無我の境地」であったからこそ、無惨の探知網をすり抜けて一瞬で必滅の間合いへ踏み込むことができたと言えます。