物語の結末におけるカルシファーの行動についても、ネット上では長年「設定の矛盾ではないか」と議論が交わされてきました。ソフィーがハウルに心臓を戻したことで、契約は無事に破棄され、カルシファーは自由の身となって青空高く飛び去っていきます。しかし、その直後にカルシファーは何事もなかったかのように舞い戻り、次のように呟きます。
「おいら、やっぱりみんなと一緒にいたいんだ。それに、雨でも降ればいいのに!」
「自由を求めていた悪魔が、なぜ再び戻ってきたのか?」「心臓を返したのに、なぜカルシファーは死ななかったのか?」という疑問に対する公式見解と作中描写の真実は、以下の3点に集約されます。
- ソフィーの「言葉に命を吹き込む力」:原作設定において、ソフィーは無意識のうちに物に生命を宿らせる強大な魔法の力を持っています。映画版でも、ソフィーがカルシファーに「元気で、生きて!」と言葉をかけて送り出したことで、ハウルから心臓を離した後もカルシファー単体で生命を維持できるようになりました。
- 契約による束縛から「自由意志の共生」への転換:かつてのカルシファーは「暖炉から出られない縛られた存在」でした。しかし、呪約が解けたことで「どこへでも行ける自由」を手に入れました。その上で彼が選んだのが、「ソフィーやハウルたちと一緒に暮らす」という自己決定でした。
- 照れ隠しの「雨でも降ればいいのに」:火の悪魔にとって雨は天敵であり、死を意味します。その雨をあえて願うセリフを口にしたのは、素直に「家族として戻ってきた」と言えないカルシファー特有の強がりであり、最大の照れ隠しです。
自由を奪われていた同居生活が、魂の解放を経て「かけがえのない居場所」へと昇華した瞬間であり、このラストの一言こそが『ハウルの動く城』という作品のハッピーエンドを決定づけています。