一般に「助かる可能性はあるのか」という問いに対して、統計データは厳しい現実を示しています。日本心臓血管外科学会や国内外の循環器集中治療データによると、心破裂の予後は発症場所が「病院の外」か「ICU(集中治療室)内」かによって天と地ほどの差が生じます。
心破裂の生存率と救命率が院外で極めて低い背景には、一般的な心臓突然死で活躍する「AED(自動体外式除細動器)」が効果を発揮しにくいという構造的要因があります。AEDは心室細動(VF)などの電気的乱れをリセットする機器ですが、心破裂による心停止は血液が物理的に拍出できないPEA(無脈性電気活動)や心静止であるため、除細動ボタンを押す指示自体が出ません。
病院内であっても心破裂の救急処置は時間との過酷な戦いです。超音波エコーで心嚢液貯留を確認した瞬間に、針を刺して血液を抜く心嚢穿刺(ペリカルディオセンテーシス)を実施し、人工心肺装置(PCPS)を装着しながら緊急開胸手術へ突入します。近年は心筋を直接縫合せず、破裂部位を特殊な生体接着シート(タコシール等)やパッチで被覆する「スーチャーレス法(無縫合術)」などの術式が普及し、手術室に生着できた患者の術後成績は向上していますが、そこへたどり着くまでのハードルが極めて高いのが実情です。